突然インタビュー⚡️井上支配人に聞く

『デヴィッド・ボウイ・イズ』予告編での落ち着いたナレーションが評判のシネ・ウインド井上支配人、初めてのボウイ体験は宝焼酎「純」のテレビCMだったそうです。急なお願いにもかかわらず、こころよくインタビューに応えてくれました。


シネ・ウインド支配人 井上経久さん

井上経久

—当初、本作の上映予定はなかったそうですね
元々は、ボウイ一周忌追悼上映『地球に落ちて来た男』だけ決めていました。それをきっかけに、新潟のボウイファンの方々が独自の広報宣伝活動をしてくれたんです。ちょうど東京での大回顧展開催が話題になっていて、本作に興味はありましたが、当館でどれだけ動員できるかを思うと二の足を踏んでいました。

—1回限定上映を英断されたきっかけは?
『地球に落ちて来た男』来館者にアンケートを配り 『デヴィッド・ボウイ・イズ』上映希望の声を聞いてみました。決してシネ・ウインドを毎日いっぱいにするほどの人数は集まりませんでしたが、熱いコメントもあり、どのような条件なら上映できるか考えてみました。配給会社に確認したところ、日本での配給権が4月10日で切れてしまうこと、1回のみでも上映が可能なことがわかり、では、むしろプレミア感を出す意味でも、1回限定上映として実施しようと決めました。既に4月のプログラムは決定していたのですが、スタッフと調整を重ね、4月7日(金)最終上映後に何とか滑りこませることができました。

—まもなく予約受付終了*となりそうな勢いです
反応が多くて、まあ、うれしい誤算といったら変ですけど(笑)正直それほどのアンケート回収はなかったので。それと人によっては (1回ではなく) もう少し長くという声もなくはないです。ただ、むしろ、ジギー・スターダストの頃のボウイを考えると、ひと夜に咲く花の感じのような上映も意外と合っているんじゃないかなと思っています。1回上映したらきれいさっぱり無くなってしまう形でお届けできることに、逆に喜びを感じます。
*先着100名様限定:予約申込97名(3/30現在)


ご自身のボウイ体験について、出会いは宝焼酎のテレビCMだったそうですが
私の記憶ですけれども、ピアノの前に佇むような感じで、弾いていたかもしれません。テロップが “デビッド・ボウイ” としかでない。で、最後に”ジュン ロックジャパーン”というんですよ。小学校5、6年の頃で、この人はデビッド・ボウイなんだな、格好いい人だな、と思ってました。

その後、ロックの勉強をするようになって(笑)名前を知ったんです。デヴィッド・ボウイとは誰だと。宇宙人のようなヒーローみたいなことが書いてあって代表的なアルバムとして「屈折する星屑の上昇と下降、そして火星から来た蜘蛛の群」 何だこれは? とずっと関心を持っていました。

初めて、ミュージシャンとしてのボウイを見たのはPVですね。1981年か82年位に、当時、MTVの先駆けのような「ポップ・ステーション」という番組をテレビ東京*でやってたんです。(*井上さんは八王子出身) ミュージックビデオをただ流してるだけのテキトーなユルい番組なんですが 「次はデヴィッド・ボウイの曲をお届けします。Station to Station!」って。後で知ったのですが、そのとき流れたビデオが Look Back In Anger でした。思っていたより声の質が違うな、太い声の人だなと思いましたね。ちょうど、その頃、クイーンと Under Pressure を出していて、その辺りから実物のデヴィッド・ボウイの声と歌と動く姿が一致して意識して見るようになりました。


ーいま時点で、ボウイのお気に入りのアルバムといえばどの作品ですか?
いまでいうと、Hunky Doryですね。聴き始めて何枚目かのアルバムなんですが、いまたまに聴いてみたいなと思うのはこの作品です。

ー以前 「Black Tie White Noise」 が好きと仰っていたような、、、
あれも好きですね。そういえば、 Hunky Dory も、Black Tie White Noiseも、ミック・ロンソンが参加してるんです。ちょっと変わってるんですけども、当時、トーカイ(Tokai)というエレキギターの会社がありまして、ストラトキャスターレスポール といったギターのコピーモデルを主に販売してたんです。タルボ というメタルギターも売ってました。金属で出来たギターらしいです。そんなギターを作っている会社なんです。

ーご自身が トーカイ(Tokai)のギターを弾いていたと?
いや、ギターは弾いてないわけじゃ無いんですけど、それほど。むしろ、カタログを集めたり見るのが好きだったんです。で、トーカイ(Tokai)のギターのカタログに イアン・ハンターミック・ロンソン が出てたんです。その時に、この人は元ボウイのギタリストだと。ミック・ロンソンも結構格好良いじゃないですか、スマートで。それで、ミック・ロンソンとボウイがくっついて。その頃、MUSIC LIFE に二人のツーショットがあって、ヴォーカリストとギタリストの妖しい関係みたいな、ロックならではセクシャルな感じのどんな人たちがいたかみたいな、振り返る感じで二人が写ってたんです。(話がどんどん逸れていく、閑話休題)

(話を戻して)Hunky Dory は名曲揃いですが、強いていえば どの曲ですか? Changes とか?
良いですね。 Changes といえば、余談ですが、うちの子供は小学校4年生で10才になったんですよ。学校で 「10年後の僕へ」というタイムカプセルみたいなものを作ったんですが 「いま僕がいちばん好きな曲はデヴィッド・ボウイのチェンジスです」って(笑)。確かに私も妻もよく聴いているんですが、なんで、チェンジス がいいのか、、、私は楽しいけど、やや不安でもあります(笑)。

ー自己変革マインドを持ったお子さんなんですね(笑)
自分のことで言っちゃうと、いろいろ好きな曲はあるんですけども、いまだと Oh! You Pretty Things です。子供が生まれたときのことを唄った曲ですね。当時、輸入盤でしか買っていなかったので、歌詞がちゃんとわかっていなかったんですけど、おっかないものが来るとか、どんな意味なんだろうとその後調べてみたら、子供についての歌だったんですね。親として、とても思い入れがある曲です。


—今までもミュージシャンのドキュメントとか音楽映画をけっこう上映していますが、これは上映してみたいなという作品はありますか?
個人的には、例えば、 JACOジャコ・パストリアスのドキュメンタリー)とかありますが、やはり支配人なので(笑)、ある程度商業的な判断もあるかなと思いますので。なので、今回の 『デヴィッド・ボウイ・イズ』 なんかは1日だけの上映(でも集客)が可能だという実績ができて良かったです。そういった可能性の中でいえば、やってみたい映画はたくさんあります。ジム・ジャームッシュが作ったイギー・ポップの映画 『Gimme Danger』 とか、先日亡くなったチャック・ベリーの映画 『ヘイル・ヘイル・ロックンロール』 とか、日本での公開権があれば関心はありますね。最近、本当にミュージシャンの映画が多くて、私が算盤弾くのがなければ、色々やってみたい映画はあります。

『ジギー・スターダスト』 上映リクエスト受付中 ですが、提供する側として上映リクエストという手段をどのように捉えていますか?
これはシネ・ウインドとしての立場になりますが、原則として、やってください、はいわかりました、という、いわゆるリクエストは受け付けてはいないんですね。ユーザーの立場としてみたいという思いは至極当然なのですが、反面、経営面も加味する必要があります。以前ある映画の上映嘆願署名をもらい上映したところ、署名の半分にも満たない動員しかなかったことがありトラウマなんです。

むしろ、私たちは、そういった要望を受けながら、お聞きしながら、上映して欲しいという人と一緒に、新潟でいろんな人に観てもらうことを考えていきながら、上映していけたらと思っています。単に要望を聞くのではなく、一緒になって未知の観客に映画を届けることを意識していますし、そういった形でのご提案であれば大歓迎なので、まあ 「シネ・ウインドの会員であれば」という但し書きがつきますが。もちろん、こういった話をしてから会員になってもらうでも結構です。何かご覧になりたい作品があれば、一緒に盛り上げていきましょう。

—最後に、新潟のボウイファンにメッセージをお願いします
デヴィッド・ボウイはファンの方ならご存知のように、時代によって、いろんな変遷をたどっている人なので、今回 『デヴィッド・ボウイ・イズ』という展覧会に注目した作品は、アーティストとしての足跡を振り返る意味でも、意義のある上映だと思います。ほとんどの人にとって、例えば、ジギー・スターダストとレッツ・ダンスは違うし、ヤング・アメリカンもベルリンの時代も違いますから、今回の上映をきっかけに、自分が知っているボウイと違うボウイの一面を見る良い機会になれば、と思っています。

(大きな声で) TO BE PLAYED AT MAXIMUM VOLUME!

—今日はどうもありがとうございました!

※2017年3月28日、シネ・ウインド事務所にて
聞き手・文・構成・ページ担当 石垣比呂志 『デヴィッド・ボウイ・イズ』 新潟上映実行委員会


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